森にすむ家
外観
美術が好きで絵や版画をかけることのできるアートギャラリーのような家にしたい。
一方で生まれ育った故郷の家にあった縁側や畳、掘りごたつが欲しいという希望がありました。
そして家族の高齢化。これははっきりと在宅介護を想定しました。
一名が在宅介護となった場合、1階のリビングルームが一番環境がよく介護にも適すため、そこを介護室にすることに決めました。
道路から玄関、リビングへとすべてスロープで行けます。
ただしその場合家族のリビングが消滅してしまうので、2階にリビングへと変更可能なスペースを確保しました。
また、1階のキッチンやお風呂など水回りと2階とは介護室を通らずに行けるようになっています。
地形は河岸段丘で起伏の豊かな土地。
遠くには山並みが見え、カーブする小道に沿ってローカル線の線路が見える。
本来はとても良い場所です。
しかし集落に入ると意外と家が建て込み、新旧入り混じって建つ家々の様式はバラバラで内向的。
どの家も昼間からカーテンを閉じて暮らしています。
ここでは土地本来の良さが忘れ去られている感じがしました。
そこでこの家は黒子になって存在感を潜め、遠い風景と対話をするようなものにしたいと思いました。
また、家の中の生活の雰囲気がいい感じで漏れるような家にしたいと思いました。
夜に明かりが付くと「家がランプシェードのようでかわいい!」と施主さんは喜ばれています。
「私の実家はここよりもずっと山の奥で父も林業を営んでいましたので、木材には格別の愛着を持っていました。
木をふんだんに使った家を希望しました。
高橋さんにお願いした今回の家は30坪。田舎のことですから30坪の家なんて小さいと思いながら予算面で仕方がないとあきらめていました。
でも、家ができてみて、思いもかけない空間の広さ、と言うか伸びやかさに驚きました。
家って実際よりも広く感じることがあるし、その効果が気持ちの良いものだと知りました。
本当に広かったら掃除が大変。予算も大変!
高橋さんがこだわった窓の位置。特注の木のヨロイ戸から漏れる日差しと吹き抜ける風に包まれるとまるで森の中にいるような気持がしてきます。
好きな絵を掛けるために壁の位置にもこだわりました。
絵を掛けたい壁には必ず横からいい自然光が入るようにできています。
家が完成して3か月、何をどこに掛けるかをずーっと考えています。
食卓からはこの家一番の景色が見えます。
遠くの山はその時々に色が変わってきれいなものです。
これからはこうして自然や木を感じながら暮らしていけると思うとワクワクして力が湧いてきます!」
玄関の上がり口には段差をなくし、脇にベンチを造り付けています。
健康な人でも靴を履くときには必ず利用します。
ベンチに座ると目の前に庭先の植木が見えるスリットを設けました。
縁側の手前半分を緩やかなスロープとし、リビングへ到達します。